『九月六日…早朝の電話』
前夜からの雨がようやく小降りになった頃でした。合羽を着て作業をしていた私の携帯が鳴りました。発信者の名前を確認し、私は覚悟のもとに受信ボタンを押しました。
「ノア、7時過ぎに亡くなりました……」
帯広の千尋家で暮らしてきたパエルっ子のノア、見事な体躯の男の子でした。その性格と体格に惚れ、バイカの婿さんとして何度も活躍してもらいました。我が家のアンラをはじめ、子供や孫たちは今も全国各地で笑顔を見せてくれてます。
今年の6月にノアは久しぶりに里帰りをしてくれました。足腰が弱ってましたが、何度も来ている、そして愛妻のバイカの居る故郷の空気をしっかり受け止めてました。
千尋さん御夫妻もウブとウバも、これが最後かな〜と思いましたが言葉にはしませんでした。
「ノア、あと2週間で16歳だったね。でも兄弟の中では1番の長生きだ、凄いよ、がんばったね。たくさんの子供をありがとうね…」
「千尋さん、長い間、本当にお世話になりました。最後は手厚い介護をしていただき、感謝申し上げます。一緒に暮らしてきたノアの娘の「のこ」はどうしてますか。呆然としてるのかな、励ましてやってください」