2007年 1月 4日 (木) 17:22
<センタロウ>
イエローのラブラドール・レトリーバーである。
オス、6歳。
母親はタブ、父親はレイラ、ともに黒のラブラドールだが、息子はイエローで出現した。
名前の由来は単純である。兄弟にそっくりなオスがいた。違いは額の上にある少し濃い茶の線だった。それで『線ちゃん』となり、後に『センタロウ』となった。
ちなみにそっくりな方は、『やっくん』と呼んでいた。こちらの由来はやや悲劇的である。彼らは中標津の我が家の玄関で成長していた。生まれは12月、寒い時期である。外の車庫の中に、間を仕切って作った動物用の台所があり、マイナス10度以下になると水を落としていても水道の蛇口が残り水で凍った。
朝一番に沸騰させた湯をヤカンに入れて運び、解凍するのが私の仕事だった。
ある日、玄関のドアを開けようとしてヤカンを持ち替えた時に、少し湯がこぼれた。
「ギャーン!」
足元で子犬の悲鳴が、、、。
数滴の熱湯がそっくりクンの肩に落ちていた。
私はあわてて玄関の外の雪の中に子犬を沈め、冷やした。
しばらくして、湯のあたった部分の毛が抜け、そして新しい毛が伸びてきた。微妙に色合いが濃く、見分けるヒントになった。
以来、その子は「ヤケドのヤッくん」となった。
離乳も社会性のトレーニングも終わり、センは我が家に残った。ヤッくんは山口県に旅立った。
新しい飼い主さんは、すでにヤッくんで理解しているからと、新しい名前も『ヤク丸』として下さった。ありがたいことである。
さて、話を戻そう。
残ったセンは、人間に穏やか、犬たちには明るく元気な遊び相手となった。そのうちオスとして役立つ時があると去勢手術は行なわなかった。成犬になっても、けして他のオスに逆らわず、親分のマロがエリアチェックをしている時は、静かに隅で見守り、無用な争いは避ける知恵があった。まさにラブラドールらしく穏健さを笑顔の中に備えていた。
そして数年。
私は油断をしていた。当日、発情の来ていたサモエドのラーナと友人の家のレオとの結婚作戦が進行中だった。前日、その前の日と2回の交尾を終えていた。その日はラーナが強くレオを拒絶したので、もう充分と判断し、我が家に帰ると犬の餌の時間だった。餌を食べさせる間ぐらいは隔離柵に入れなくていいだろう、そう思ってラーナをクサリに繋いだ。
台所に食器をとりにいった瞬間だった。
「おとうさん、ラーナとセン!」
女房の悲鳴のような声が聞こえた。
振り返るとセンは見事にラーナと交尾をしており、近づこうとした瞬間に互いに後ろ向きに体位を変えた。少なくとも15分は離すことのできない姿になってしまった。
センが繋がれていた小屋の前には、食べかけの食器と主の消えたクサリ付きの首輪が残っていた。
60数日後、ラーナはレオの子を2匹、そしてセンの子を4匹、無事に出産した。
「同期複妊娠」→「多胎系の動物で父親違いの子供を同時に出産すること』、、、ノラネコでは時々発生する事象である。しかし、ノラの犬ではまずありえない。発情中のメス犬は特定のオス犬にガードされ、他のオスとの交尾などは不可能に近い。
しかし、人間が管理をしている状態では、メス犬を守るオス犬がいないので、人為的なミスで起こりうる。このケースもまさに私の油断だった。
4匹は同じ姿で生まれ、同じ姿で成長していった。
色はイエローラブ、父より少し薄く、サモエドでありながら白くはなく、いつも泥で化粧をし、茶モエドと呼ばれている母に近い。
毛の長さはサモエドよりは短く、ラブよりは長い。
耳は垂れているが尾は巻き気味、吻の形はラブで胸はサモエドを示していた。
オスばかりの4匹は、札幌、群馬、兵庫、広島の新しい飼い主さんのところで元気にしている。
私は彼らに新しい犬種名を付けた。サモエドとラブラドールのハイブリッドなので、
『サモエドール』
である。
姿、動き、性格。どれをとっても新しい家庭犬としては優秀である。
その後、センは求められて2度の結婚をした。もちろん相手はラブラドール、公認の交配である。
そして昨年、かつての技を期待されて、今度は望まれて不倫犬作りに参加をした。相手はメキシカンへアレスドッグのムム子である。体格差はあるものの、そこはセンである。見事にセイコウをセイコウさせ、3匹の子犬が誕生した。
毛のない子は王国に1匹と、以前から予約をされていた方のもとへ。まるでイエローラブと間違えるような姿で生まれた有毛(パフ)の子は長野へと旅立った。
センは『空飛ぶ精子』の持ち主と言われている。
その特技を生かし、もう一度、彼の子供を見てみたいと願う私はわがままだろうか。
___________________________________
写真説明
最高に幸せな時のポーズ。
センちゃん、顔が見えなくて立派な(役立つ)〇玉が見えるんですけど・・・。
この記事のトラックバックURL
http://yac-net.co.jp/ubu/blog/tb.cgi/ubu_1167898960