2004年2月
  流氷がやって来た。水平線上に広がる姿は一直線に見える。
 日が傾き、周囲は紫に変わろうとしていた。しかし、北からの氷は、まるで自ら発光しているかのように白く輝き、空のピンクと海の青を分けていた。

 ズームレンズで寄ってみた。くっきりとした白い線が、空側で微妙に歪んでいた。海の温度を閉じ込めた流氷と、それを迎えた大気の温度の差により、もやっているに違いない。
 風もなく穏やかで、且つ気温の下がった時にしか見られない現象だ。

 彼方の氷の群れも、風と波に大きな影響を受ける。一晩で接岸し、その翌日には姿を消すこともしばしばだ。まさに北の海の旅人、それも流浪の民とでも言うべきだろう。
 北半球で流氷が見られるもっとも南の地域が、この道東になる。波に漂い、時に重なりあい、4月までを揺れて過ごす。その周囲にはアザラシやオオワシ、そして無数のプランクトンや魚の姿がある。命をたくさん抱えて、氷たちは春を待つ。
〈津田 典秀〉







ムツゴロウ動物王国「いしかわさんの命がいっぱい」

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