2003年9月

 夏を感じぬままに8月のカレンダーを剥がした。
 翌日から、何たることか、9月は快晴と高温の日々となり、私は夏を探しに、あわてて車を走らせた。
 午後遅く、開陽台の周辺を西に向かっていた。丘を越えた時だった。正面に傾きかけた太陽が、沸き上がってくる大きな雲と闘いながら、鋭い光芒を紺青の空に投げかけ、夏を主張していた。
 その夜、最接近の日から1週間が過ぎた火星が、まだ強い赤みを保ち、銀河を背に輝いていた。
 私は三脚にカメラを固定し、数え切れぬ星の光をフィルムに集めていた。
 南東からの風を感じた。それは涼しさと言うよりも寒さを運んできていた。
 車に戻り、私はフリースのジャケットを取り出した。
〈津田 典秀〉







ムツゴロウ動物王国「いしかわさんの命がいっぱい」

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