中標津こどもクリニックブログ

二刀流

二刀流といえば、今や剣豪宮本武蔵ではなく、日本ハムファイターズ大谷翔平の代名詞となっています。
先日五十台半ばの私も「二刀流デビュー」をいたしました。

といっても、もちろん野球ではなく雪かきの世界です。
当院の駐車場が常にアスファルトを出しているのは、患者さんのためであることは第一ですが、その大きな理由は「次の雪かきを楽にする」という目的であります。

現在ホンダの中型除雪機を使って作業をしておりますが、自分の中での雪かきの基本は「ヘラに始まって、ヘラに終わる。」であります。
多い雪が降ったとき以外は幅90センチのワイドスノープッシャーで雪をかき集めて畝(うね)状にし、それを除雪機で一気に飛ばし、仕上げに残った雪をスノープッシャーで排除することによってアスファルト面をバッチリ出します。
後は顔を出したアスファルトが太陽光を吸収して、駐車場全体をドライ路面に仕上げてくれるのです。

そこまでやっておくと、次に雪が降った時には面一(つらいち)になったアスファルト上をひっかかることなくスノプッシャーで駆け抜けることができ、除雪時間が大幅に短縮されます。
入念な仕上げを怠ったり、積もった雪の上を自動車が通過して固まってしまうと、次のヘラ作業の時に引っ掛かってしまって作業が難航してしまいます。

そんなわけで、「意地でもアスファルトを出す」ということに心血を注ぐのですが、「しっかり仕上げよう!」とすると、少しばかりの雪でも「踏まれて固まって凸凹になるかもしれない。」と思うと、出動をすることになります。

一旦出動するとなると、雪の量がどんなに少なくても正面駐車場側の約600平方メートルの駐車場を仕上げるだけでも、面積をヘラの幅の0.9メートルで割り算すると666メートルとなり、スノープッシャーからどうしてもあふれてしまう雪の存在を考えるとその処理のために歩く距離は往復して倍になるので、寄せ集める作業だけで1333メートルを歩くことになり、折り返し点でのタイムロスなどを全く計算しなくても時速2キロメートルで作業をしたとしても40分は歩き続けることになります。
どんなに雪が少なくてもこれだけの時間歩き続ける必要があるのです。

この現実を目の前にして以前から
「どんなに少ない雪でも、完璧にアスファルトを出して次の雪に備えるにはこれだけの作業が必要になるんだ。それ以外の作業も沢山あるし、なんとか作業時間を短縮できないものか?」
と感じておりました。

そして、去る2月9日朝、「その時」は来たのであります。
朝目が醒めると前日からの雪がうっすらと積もっています。
わずかな雪ではありますが、アスファルトは見えず「積雪」ではあります。
できればしたくない雪かきではありますが、先々のことを考え重い腰を上げました。
雪かきを始めようとしたまさにその時、その日は敷地内数ヶ所に配置しているスノープッシャーが前回の作業工程の関係でクリニックの玄関にたまたま二つ重ねて置いてあることに気づきました。
その瞬間、頭の中で電球が光ました。
「二刀流だっ!」
早速二つのスノープッシャーを両手に一つづつ持ち、テレビでよく見かける新千歳空港の除雪チームのように少し重なるように並べて押してみました。
やってみるとテレビで見た通りの見事なフォーメーションプレーが展開されました。
今度はV字型にあわせてみるとスノープラウで大量の雪をかき集めるがごとく雪が運ばれてゆきます。
作業時間は大幅に短縮、二刀流大成功です。

でもただでさえ雪が集まってくると重くなる90センチ幅のスノープッシャー2枚を押し続けると、やっぱり相当疲れます。
当たり前か・・・


新聞配達の方、どうもありがとう

「何が何でも1日1ブログ」
みたいに追い立てられるのはいやなのですが、気になったことは間隔が無くとも発信いたします。

今日の朝の、ものすごくうれしかったことがありました。

今日は未明から雪がはらはらと降りだしたようで、念のために6時起きした時点では「一応やっておくか」という程度のつもり具合でした。
町内在住の方だったら「あの程度の雪では雪かきなんていらないでしょ」
と思われると思いますが、
当院の養護学校側の通路は日陰になっており、積もった雪が車などに踏まれて舗装にこびりついてしまうと、溶けてくれないのでなかなか取れません。
その後は日中に表面だけが溶けて、午後になって再度凍結し、見事にツルツルになります。
まがりなりにも小中学校の通学路になっているので子ども達がすべって転んではいけないと踏まれる前に必死に雪かきをしているのです。

そんなわけで今日も今日とて、まるで「レレレの掃き掃除」のような雪かきを開始しました。
養護学校側にある家玄関に来た時に「んっ?!」と立ち止まりました。
玄関に上がるほんの数段の階段に、わずかに積もった雪が掻かれた形跡があります。
一瞬何が起きたのかと思いましたが、すぐに状況を把握しました。
新聞配達の方が階段脇に置いてあった除雪用のへらで、自分が足を踏み込む部分の雪を除けてから階段を上られたと推測しました。
日陰の階段の雪を踏み固めてしまったら、購読者が滑ってしまう。」
という心使いがとてもうれしかったです。
私自身も小学校6年生から高校3年生まで新聞配達をしていましたが、こんなにも細やかな気持ちを持った配達員には出会ったことはありませんでした。

そんな方に毎朝新聞を届けていただいていると思うと、新聞を読むこと自体も温かく楽しいことのように思えます。
そんな気持ちにさせていただいて、本当にありがとうございました


スケボー

インフルエンザの予防接種でしばらく忙しくしていて更新できずにいました。
どうもすみません。
気まぐれな発信者ですが、今年もお付き合いください。

ついさっきの出来事。
クリニックの駐車場に車が停まったので、
でかい商売道具で家まで帰れないので、うちの駐車場に仕事用のタイヤショベルを置かせてあげてる近所に住んでいるオペレーターか来たかと思って、駐車場の照明を点灯して表に出たら何だか様子が違う。
いつも乗ってきている車とも違うし、若者三人がスケボーをしている。
「@@(件のオペレーター)の仲間かい?」
と尋ねると、3人ともきょとんとしている。
「どしたの?」
と、尋ねると、
「こんなに舗装が出ている場所は他に無いから」
と、スケボーをしにきたらしい。

常日頃
「中標津で2番目に舗装が出ている場所」
を自負している当院の駐車場ですが、(第一位は飛行場)
日頃の雪かき活動が評価されているようで、うれしい気持ちになりました。
「となりのバアサン寝てるかもしれないから、静かに楽しんでね。」
と言い残して照明をつけたままにしておいたら、しばらくしたらいなくなっていました。

やっぱり寒いよね。


LIVEのおしらせ

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いわさききょうこ
          with常富喜雄
ひつじ雲ツアー2016

「猫」の常富喜雄氏がプロデュースする若手シンガーのLIVEです。
ぢいやの常富さんもご一緒にステージに立ちます。
当会場始まって以来の「きれいなお姉さん」のLIVEです。
事前に音源を頂きましたが、曲も歌も素敵です
乞うご期待!

8月31日水曜日
開場 19:00
開演 19:30

前売り 2500円
当日券 3000円
いずれもワンドリンクつき
前もってお電話等でご連絡いただければ「前売り扱い」といたします。

LIVE終了後同じ会場でお2人を囲んでみんなで飲み会です。
翌日のお仕事に差し支えない程度にご参加ください。


「いわさききょうこ」
高校時代の同級生とのユニット「ピコマコ」でデビュー。
解散後はソロアーティストとして活動中。
現在までに5枚のアルバムをリリース。


どうぞお越しください。
お問い合わせは、中標津こどもクリニック0153-78-8311
院長 栗山まで・・・


写真

先日、鳥取県米子市で「日本小児科医会総会フォーラム」という大きなミーティングが開催されました。
日頃からお世話になっているとなり町の境港市(鬼太郎などの妖怪達が立ち並ぶ水木しげるロードのある町)の先生が、わずか4人の実行委員会の委員長になられたので、人手不足の明らかな現状に黙ってはいられず前日入りして運営のお手伝いに志願しました。
閉会式までいてしまうと、どう考えももはやその日のうちには中標津までは戻れるはずもなく、翌日も半日以上休診になってしまうので、「申し訳ない」と思いながらも「この際だから」と一日休診にして鳥取市まで足を伸ばしました。
というのは、子どものころから「一度は行きたい」と思っていた鳥取砂丘が見たかったからです。
中国山地の花崗岩(かこうがん)、千代川の流れ、日本海側の北西季節風、の三つの要素が偶然を越えた奇跡的な組み合わせとなり、数千年をかけて出来上がった巨大な砂丘は見るものを圧倒するすさまじい迫力があります。

砂丘自体もすごかったのですが、近くにあった「砂の美術館」がまた素晴らしかったです。
国立公園であるため持ち出し禁止の鳥取砂丘の砂は、その組成、粒子の大きさ、不純物の少なさから、水と一緒に枠に入れると見事に固まります。
まるで雪像作りをするときに枠の中に雪を詰め込むようなものです。
そして、できた大きな砂の塊をこれも雪像作りと同様にいろいろな道具を使って掘り込んでゆきます。
雪像作りと決定的に違うことは、砂像は一旦削りすぎてしまったり、突出した部分が折れてしまったら、「雪と水を混ぜてくっつける」といった修復が効かない事です。
細心の注意を払って作られた巨大な砂像が屋内に(雨にぬれると崩れてしまう)に配置された1年限りの作品群です。

そこで眼にした光景に若干の違和感を感じました。
スマホが広く普及するようになってから、景勝地、観光地、イベント、飲食店等々、あらゆるところで写真撮影をしている人を見かけます。
かつてのカメラは、「持ちフィルム」の数的制限がありましたが、スマホ時台の今では何枚取ってもコストがかかりませんから「食べ放題、飲み放題、撮り放題」状態です。
全ての砂像の写真を撮り、さらに自撮り棒で写真を撮り、といった作業を次々と繰り返してゆく方を数多く見かけました。
砂像のスケール感、迫力、質感はカメラには絶対に納まらないのだから、「もっとちゃんと観ればいいのに」と思うのですが、記録におさめることの方が優先事項のようです。
私達の町の開陽台もでも、多くの方がカメラを回したりしてパノラマ写真の撮影をしていらっしゃいますが、あの息を呑む風景を記録することは不可能です。
ライダー時代に多くのそんな風景に出会った私は、カメラに納めて自分のものにした気になるよりも、瞳を通して脳裏に焼き付ける方を選択しました。
毎年のように訪れた北海道でしたが、そのうちにカメラを持つことさえなく旅をしていました。

幼稚園の運動会や学芸会で、わが子の晴れ姿をビデオに納める事に全労力を費やしているご家族に対して、「リハーサルはどうぞ御撮影ください、本番は全体を観てください、公式映像はこちらで撮影します。」といった対応も今や珍しくはありません。
シャッターを切ることを否定するつもりは全くありませんが、せっかくなんだから「よく観てよっ!」と思うのであります。


7月のLIVE

今年もまた蒸し暑い内地を脱出してミュージシャン達が北海道ツアーを組む季節が近づきました。
スケジュールは以下のとおりです。

7月8日(金) 「五十一」
スライドギターの名手、泣かせるブルース
19:00開場 19:30開演
前売り2500円 当日3000円 いずれもワンドリンクつき

7月14日(木) 「新井武士」(元ダウンタウンブギウギバンド)
お茶目なおもてなし感を持ったロック魂、宇崎竜童さんの話も面白い
19:00開場 19:30開演
前売り2500円 当日3000円 いずれもワンドリンクつき

7月22日(金) 「告井延隆」
何度聴いてもまた聴きたい、「アコギ1本でビートルズ」の妙技
19:00開場 19:30開演
前売り2500円 当日3000円 いずれもワンドリンクつき

どうぞお越しください。
お問い合わせは、中標津こどもクリニック0153-78-8311
院長 栗山まで・・・


ダニ退治!

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赤く見えるのがダニです
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頭皮は少々赤いのですがダニはいなくなっています
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元気に歩くダニなのですが、ピントがぼけています
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これが、ダニツイスター
中標津に移住する以前は都会暮らしだったもので、
それまでダニという生物を見たことがありませんでした
なので、
「ダニがついたので、取っていただけますか?」
というお問い合わせがあったときには、
下手こいて刺入部をちぎってしまうと、体液が流入して後々大変な事になるので、
「申し訳ありませんが、皮膚科の先生がお詳しいのでそちらを受診して下さい。」
と、丁重にお断りしておりました。

今年に入って、「このままでは、いかん!」と、ふと思い立ち
ダニツイスター」なる新兵器を購入いたしました。
メカニズム的には、釣り針の「返し」のようなものが付いていて一旦刺されてしまうとまっすぐには抜けないダニの刺入部を、クルクルと回転させることによってスムースに抜くという代物です。

うまい具合に先日、飛んで火に入る夏の虫のように頭にダニを付けた知人がやって来て、ありがたく実験台になってもらったので、
「あとは、本番を待つのみ!!」
という状況になっておりましたが、本日第一号の患者さんがいらっしゃって無事にダニの除去に成功しました。
何事も終わるまではドキドキするものですが、無事に頭から取り外したダニがティッシュの上を歩き回る姿を見て「無事に取り外せた!」と胸をなでおろしました。

「こんなヘボ小児科クリニックでもダニの除去はできるんだよということを教えてあげれば、次にやられた人に親切な情報かもしれないので、この状況を写真入りで周知させていただきたい。」
と、本人とお母様に了解を頂いて、「使用前」「使用後」の写真を掲載する運びとなりました。
ダニに喰われた方は、当院でも対応できますのでご相談ください。



しかしながら、「確実に取れる」という保証は無かったものですから、処置にかかる前にお願いするのには少しばかりの勇気が必要でした
無事に取れてよかった・・・


「猫」LIVEのお知らせ

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この時期の恒例となった「猫」のライブが今年も開かれます。
今年はニューアルバム「猫6」を引っさげての中標津入りです。

NEKO Tour 2016 
HOKKAIDO 北の大地ツアー
New Album 猫6 発売記念
Live in 中標津こどもクリニック

6月8日水曜日
開場 19:00
開演 19:30

前売り 3000円
当日券 3500円
いずれもワンドリンクつき
前もってお電話等でご連絡いただければ「前売り扱い」といたします。

LIVE終了後同じ会場でお2人を囲んでみんなで飲み会です。
翌日のお仕事に差し支えない程度にご参加ください。


「猫」
1971年に結成され、吉田拓郎のバックを務め、
「拓郎の弟分」的なポジションで拓郎が作詞作曲した1972年発売の「」「地下鉄に乗って」でブレイク、その後はオリジナルの「昼下がりの町」「各駅停車」などがヒット。
いまだ現役で、ニューアルバムまで作っちゃいました!。


七転び八起き

今日は管内某高校まで内科健診に行ってきました。
広い音楽室の一角に診察スペースがあり、残りの部分で生徒さん達が上着を脱いだりしてスタンバイをしています。
パーティションで区切られているために姿かたちは見えないのですが、生徒さん達の話し声が聞こえてきてだんだん大きくなってくると、養護の先生が注意して一瞬静かになり、しばらくするとまた賑やかになります。
そんな中で生徒さんのうちの一人が、ダルマの絵「七転び八起き」の文字を描いてあるTシャツを着ていました。
パーティション越しに聞こえてくる会話は
「七転び八起きって、おかしくない?」
「何で、7回転んで8回起きられるの?」
というものでした。
今まで何の疑問も感じずに「熟語」としてそんなもんだと思っていたのですが、そう言われてみると確かに変です。
文字の並びから「何度でも!何度でも!」という雰囲気はよく伝わりますが、確かに7回転んだだけでは、7回しか起きられません。
若者の素直な感性に驚かされました。
拍手です。


急行「はまなす」の思い出【後編】

打ち始めたうちにダラダラと長くなってしまって、「はまなす」に乗る前に【前編】が終わってしまいました。
いよいよ「はまなす」に乗り込む【後編】です。

新青森駅では素早くホームを走りぬけて改札を通過し青森駅までの一区間だけ乗る列車に向かい、青森駅で乗り換えに有利なポイントで電車に乗って臨戦態勢です。青森駅に着くやいなやダッシュで「はまなす」に向かいますが、残念ながら客車の数はいつもどおりで増結されている気配はありませんでした。「新幹線からこれだけ多くのお客さんが乗り継ぐのに大丈夫かよ?」と思いながら2両だけある自由席車両の1両目に乗り込むと、「残念、満席!」続いて2両目に移動するもこれまた「残念、満席!」万事休すです
その時、2両目の車両の中央付近に子どもがたくさん座っていることに気づきました。見るからにサッカー選手っぽいスポーツウエアーを着てお行儀よく並んでいます。
急行「はまなす」は青森駅を出ると次の停車駅は2時間半後に津軽海峡の向こう側の函館駅です。その後はチョコチョコと停車を繰り返しながら札幌に向かいます。
そこで「札幌から来たのであれば、さすがに鉄道の長旅は選択しないだろう。この子達は次の停車駅で降りるのではないか?」と考え、近くにいた子どもに「君たち、どこから来たの?」とにこやかに尋ねると「函館です。」と、予想通りの答えが帰って来ました。「この先2時間半は立っていなければならないが、このグループの真ん中あたりの通路に立っていれば間違いなく函館から先は座ってゆける」と、とりあえず函館から南千歳の5時間は座って行けることが保証されてまずはほっと胸をなでおろしました。
監督と思しき方からお話を聞くと、この子達は本来は2時間ほど前に出発した函館行きの最終の「スーパー白鳥」に乗って午後10時前に函館駅で解散する予定だったらしいのですが、新幹線のダイヤの乱れで乗り継ぐことができずに夜行列車に乗る羽目になったようです。みんなこの雪には「やられてる」のです。
こちらはというと近くにいた「札幌まで帰る」サラリーマン風の若者に「みんな函館で降りるらしいよ♪」と話しかけて、お互いに励ましあっていました。
通路にまんべんなく人は立っているものの、決して「すし詰め」までは行かない状態で「はまなす」は函館駅を出発しました。となると、この先函館までは人が増えることは無く、その函館からは座ってゆけるという安心感、満足感にみ満たされた気持ちになりましたが、そうなったらそうなったで、かのアドルフ・ヒトラーの言うとおり「欲望は膨張」するのです。
函館から先の着席が確保されると、次に「座席ではなくとも、なんとか函館まで座れないものか?」という思いがムクムクと首をもたげてきます。スーツケースでも持っていれば即座に椅子にするのですが、あいにく持ち物はリュックサック1個で役に立ちません。そこで「何か使えそうなものは無いか?」とキョロキョロと車内を見渡すと・・・・「あった!」
先ほどお話をしていた監督さんと思しき人の背中と座席の背もたれの間にでっかいスーツケースがありました。チームのメンバーが混み合った列車の中で着席しているので、網棚にのらない大きな荷物を通路に出すことをためらっていらっしゃるのでしょう。すごく「いい人」です。
そのスーツケースにはおそらくビブス、フラッグなどの「監督七つ道具」が入っているものと推測されますが、中身なんてどうでもいい!私はあのスーツケースを椅子にして座りたいのです。
しかしながら「そのスーツケース貸してください、座るから」とはさすがに言えませんからとんちの一休さんのようにひたすら脳みそを回転させます。そして「チーン」と鳴りました。

私:「列車が走り出しましたから、もう乗ってくる人も、車内を移動する人もいらっしゃいませんので、背中のお荷物を通路にお出しになってはいかがですか?」
監督:「いえいえ、子ども達がこれだけ多くの席に座わらせて頂いて、その上通路に荷物を置くなんて申し訳ないです。」
私:「通路にはまだ余裕もありますし、せっかく座れたのであればゆったりなさって下さい。」
監督:「いえいえ、こうやって座らせていただいてるだけでありがたいと思っています。」
私:「今日は子ども達の引率でお疲れでしょうし、明日もお仕事ですよね?ゆっくり体を休めるのも仕事の内ですよ。」
監督:「そうですかぁ?それではお言葉に甘えて」
と背中のスーツケースを通路に出されました。
私(心の声):「来いっ!来いっ!」
そして監督は通路に出したスーツケースを横にしました。
私(心の声):「来たっ!!来たっ!!」
監督:「よろしかったら、おかけになりませんか?」
私(心の声):「やった!!!やった!!!」
私:「えっ?よろしいんですか?ありがとうございます。」
と言って、近くのサラリーマン風の若者と「スーツケース椅子」をシェアして函館まで座らせていただきました。
立っていたときから比べると夢のような環境で、函館駅までうつらうつらしながら過ごしました。天国のような気分です。
そして、函館駅では笑顔で子ども達を見送って、念願の座席に座って帰って来ました。

当事は「生きる力が冴えた!」と思っていましたが、今どきの表現を使えば監督さんは私のメンタリズムにまんまとはまってしまったと言うことでしょうか?

そんな急行「はまなす」の思い出でした。


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